DVD

 こういうのが売り出されていたのかと思うと感慨深い。ドリフターズのドタバタ劇は、その名の如く、殆どは地方公演の生中継だったと記憶している。リーダー・故いかりや長介氏が、早変わりの着替えで舞台の袖に引いたとき、開いている会場の窓の外から、隣家のTVで自分たちの芸が、今まさに放送されているのをみて、不思議な体験をしたような気がしたと言っておられたのを記憶している。
彼ら芸人は、舞台の上のことは、次から次へと雲散霧消してくれるからこそ、毎回同じ芸の焼き直しを新たな気持ちで挑戦していけたと思うのだが、それらの多くはTV曲の倉庫に保管されていたのだなと思うと、TVというものが演芸に与えた影響の計り知れなさを感じる。
小学校高学年時代の自分は、加藤茶の「蝶々」や「肥桶の天秤棒担ぎ」を真似しようと、毎回食い入るように見ていたものだが、そういうのは大抵大人たちの眉を顰めさせたものだった。荒井注の「なんだ馬鹿野郎」にしても、観客やTV視聴者に向かって悪態をつくなんて、当時考えられなかったハチャメチャだった記憶している。その後に加入した志村の活躍も含め、ドリフの芸は、大人の顰蹙を買う芸のオンパレードだった。
そういった常識破りの芸で、あれだけの長期間、同じ時間帯の視聴率トップを続けたことは、裏番組を製作する人たちには、管理の脅威だったことだろう。たぶん、ドリフの最大のライバルは、巨人戦だけに絞って放送していたプロ野球中継だったろうと思う。
う〜ん、ドリフの存在がプロ野球中継を巨人戦一色にしてしまったなどと考えるのは穿ち過ぎか?でも、ドリフの常識への挑戦は、裏番組製作者に、そんな非常識な手段には知らせるほどの脅威だったんだろうなあ……「全員集合」を放送終了に追い込んだのが、あの非常識番組「俺たちひょうきん族」だったんだから。