検疫官さん、お疲れさん

最近のニュース・トップは何かと言えば、「新型インフルエンザ」と決まっている。
海外から、日本の報道ぶりを見ている人には、日本政府やマスコミの対応がヒステリックに映っているらしい。村上龍が編集長を務めるJMMに寄稿している冷泉彰彦氏などは、そう思っているらしい。
http://ryumurakami.jmm.co.jp/dynamic/report/title3_1.html

私も、マスコミの報道の仕方については同感だけど、厚生省のそれも現場の検疫官たちについては、実に職務に忠実に働いていると思う。広い国際空港に押し寄せる世界中から来る人・帰ってくる人すべてに、必要な問診をしなくてはならないというのは、あまりの激務だと思う。絶対数が足りないことから、自衛隊から応援が行ったとの報道もある。それでも、彼らには疲労の色が見えるというのだから、頭が下がる。

思えば悲しい話ではないか?

誰よりも、有効なワクチンの存在しないウィルスに感染する恐怖についての知識を持った彼らが、体調不十分の状態で、疑わしき人々と言葉を交わし、接しなくてはならないのである。疑わしき人たちということは、そのほとんどの人が警戒の必要のない人たちであり、中にほんの一握りの感染者がいるというロシアン・ルーレット

思うに、日本国というのはストレスの多い国だ。

WBC連覇をしたプロ野球の日本代表チームのキャプテン・イチロー選手は、ストレスから胃潰瘍で胃に穴が開き、その出血のために目眩がしたらしく、開幕から数試合の休養を余儀なくされた。監督じゃなくて、選手がですよ。たとえプロの仕事とはいえ、審判がプレイボールと開始を宣言する野球というゲームで、そこまでの重圧を強いる日本という社会は、異常に見えるのかもしれない。

これでも、最近は随分楽になったんじゃないだろうか?30年近く前に姉が死んだとき、サラリーマン社会には「QC活動」なるストレスの元があった。「サービス残業」という言葉すら存在しない、「当然だろう」と言わんばかりに、勤務時間外に「会社への奉仕を研究する運動」であった。

PDCAとか魚の骨とか、業務の中に生じる様々な問題点を徹底的に原因を究明し、その改善点を探り出していくので、経営者や管理職たちにはすこぶる評判が良く、全社を挙げて取り組もうとした会社がいくつもあった。

問題は、それが残業とみなされず、勤務時間外にまで厳しく誰の責任であるかとか言う問題点のあぶり出しが行われたために、多くのサラリーマンたちが胃潰瘍やノイローゼというストレスが原因と言われる病気に罹っていたことだ。姉の癌だって、それが原因だったのではないかと、私は未だに疑っている。

この国は、働いている個人に責任をとらせ過ぎているように思える。部署は違うが、保健所で働いている人たちなども、自分の責任管区から食中毒などが出ようものなら、後々の成績に響くものらしい。確かに、そこの部分には職務に忠実であってほしいが、検疫官氏たちにも家族はいるんだろうに、能力以上の責任を持たせて、不備があれば徹底的に責任を追及したりして、ストレスから健康を損なうなどというような事態にならないことを切に願う。