最近見たものから

Ray / レイ [DVD]レイ・チャールズの歌に最初に接したのは、どの曲だったろうか?彼の歌と意識しないで聞いたのなら、”Georgia on my mind””I can't stop loving you””Unchained my heart”などなどどれが最初か分からない。それぐらい、この人の歌は、極自然に耳にしていたように思う。

その彼の伝記映画"Ray"は、後年彼がヘロイン中毒にのめり込んで行く原因となった少年期におけるつらい体験を最大の謎として描いたものだ。盲目の彼がふとした時に感じてしまう幻覚「床一面を浸す水のイメージ」その中で彼が触れてしまう「死体のイメージ」。いずれも、彼がヘロインに手を出す前から感じていたものであるから、彼の心の中に存在する闇の大きさは、見る者に伝わってくる。

そして、彼が麻薬中毒から立ち直るきっかけとなったものを知るとき、感動に包まれることは約束しよう。ぜひ、見るべき映画だと思う。

恋愛適齢期 [DVD]私は英語が不得手なので、ジャック・ニコルソンの演技が上手いのかはよく分からない筈なのだが、この人の凄いところは言葉の意味なんか通じてなくとも、伝わってくるところだと思う。

恋愛適齢期”で彼が演じたのは、30歳以上の女性とはセックスする気になれない中年後期のプレイボーイ。そうであるはずの男が、GFの家で知り合った母親と一緒の生活を強いられる羽目になってから、状況は変わり始める。

「若い娘とその母親ぐらいの女性とどちらが良いか」などという比較は、自分の年齢とも考え合わせても、さしたる意味は無いように思う。確かに最近の女子高校生のブラウスの下に透けて見える色物の下着や極限までたくし上げた短いスカート、コンビニで下着丸出しでしゃがみこんで買い物するローライズのジーンズの女性など、若い娘の放つ色香そのものは強烈で性衝動を駆り立てるには十分ではあるが、事、恋愛と言うことになったら、相手が若けりゃ良いってもんじゃない。要は、どこまで理解しあえるか?どこまで信頼しあえるか?

思うに彼は、今までセックスは数え切れないほどした事はあっても、恋愛をしてこなかったのではないか?「遊びだったのね」ってな訳だ。そんな彼が、その年齢にして初めて恋愛を体験してしまったのだから、無邪気なほど心はときめいてしまう。と同時に、それを失ったときのショックも大きい。それでも、遊びの時とは違って、恋情の炎はそんな木枯らし中でも燃え上がってしまう。そして、それゆえに切なくはある。

シカゴ 期間限定廉価版 [DVD]殺人事件とその裁判をショーのように扱う事に不快感を覚えるなどという野暮な感想を述べるもんじゃない。そんな人でも、前代未聞と言われる事件が発生すると、TVのワイドショーなどで情報収集をしようとした事は、一度ならず、ある筈だ。

ショー・ビジネスの世界に魅入られたあまり、まともな倫理観を育てることが出来なかった女達と、目立ちたがりで女の起こす事件を食い物にしているヤクザな弁護士のコスっ辛いメディア戦略と法廷戦術を描こうと思うと、どうも暗くてじめじめした話になってしまうが、そんな彼らの常識とのズレ加減を逆手にとって音楽劇に仕立て上げれば、皮肉にも世間は興味本位でしか関心を持っていないことを言い当ててしまう。そんな映画です。

出来は良いかもしれませんが、ミュージカル映画が苦手な人には苦痛かも?

スウィングガールズ スタンダード・エディション [DVD]映画の予告編などと言うものは、もしかしたらあまり見ないほうがいいのかもしれない。特に、フジ・サンケイグループの支援を得て作っている映画の予告編は出来が良いだけに、期待だけを先行させてしまったように思う。最近じゃあ、「海猿 スタンダード・エディション [DVD]」がそうだった。予告編を越える映画を作ってくれと言いたくなる。

この映画も、何の予備知識もなく、普通の学園コメディーとしてみれば、それなりの楽しみ方は出来たかもしれない。不幸にも私は、もっと過大なものを期待していたのだろう。

なんか、この映画に登場する人物には、いちいち共感できないのだ。主人公のいい加減な性格で、大勢の人間を食中毒にかからせ、妹のゲーム機を無理やり質に入れてしまう極悪非道さと大事な役目を果たさずに仲間の多大な迷惑をかけながら、どうにもならない事態に陥るまで黙っていた無責任さ加減。こんな人間に共感を覚えるはずが無い。上野樹里を使いながら、こんなキャラしか作れない製作者に腹が立つ。

また、応援されることが当然と思い込んでいる下手糞な野球部員などは言語道断だ。さらに、そいつに入れあげている主人公の友人ときたら、野球部員に失恋した後は、どう見ても魅力的に描かれていない教師に関心を持つと言う、なんか人物描写が粗雑でいい加減で、受け狙いが多すぎる。

どうもこの映画を作った人は、大勢の人間で音楽を作り上げていく作業を退屈なものと決めかかっている節がある。だから、必要以上のギャグに力を入れ、受け狙いが多すぎる嫌いがある。

でも、それは違うと思う。こういうのは、たとえドキュメンタリー映画で撮っても、けっこう面白いものなのだ。そういう音楽作りに対しての愛情が感じられない。ギャグで笑いをとれば良いのか?

無論、多少のクスグリは必要だ。そのバランスが非常にうまくいっているのが、「青春デンデケデケデケ デラックス版 [DVD]」だと思う。考えてみれば、私は、それを期待していたのだろうか?残念ながら、それは望めていないと思う。