アジア杯インド戦

相手が攻めてこないという点ではフィンランド戦と同じような試合だった。ただ違いがあるとすれば、インドには攻める意思はあったのだが、前線にパスを繋ぐだけの技術がなかった事と、日本の猛攻に曝されて攻守の切り替えが完全に後手後手に回ってしまったというしかない。いずれにせよ、殆どの時間が相手陣内で過ごす展開となった。
相手が自陣ゴール前に釘付けになってしまっている状態というのは、守るに関しては楽な展開かもしれないが、攻めるに関してはスペースが無くなり意外に手こずるものなのだと思う。日本代表は、この辺があまり上手くない。

こういう場合は、相手ゴール前に群がるDFを横に引き伸ばすためサイドから崩していくのが定石だが、サイドからばかり攻めていてはいけない。中へドリブルで切れ込んでDFを引き付けてスペースを作ったり、ボールの受け手も巧みに動いてスペースを作り出したり、そのスペースへ走りこんでいかねばならない。

そういう意味で、最初の15分ぐらいまで久保の惜しいヘディングがGK正面をつくぐらいまでは、みんな良く動いていたが、攻め倦むと同時に動きが少なくなる。サイドを突いても中での動きが無くて止まってボールを待つから、相手にボールをカットされる。しかも、サイド攻撃一辺倒になってしまった時間帯もあった。これでは、相手にパターンを読まれてしまう。

小野が先制点を挙げる前後から、ようやく小野を中心に多彩な攻撃パターンが生まれ始めた。相変わらず攻守ともにミスの多い日本だが、日本の速い寄せにインドの選手は慌ててボールを処理するから、すぐにボールは奪い返されてしまう。小野の先制点は、そうした余裕の無いインドのDFのボールの処理ミスがプレゼントボールとなって小野の目の前に転がったものだった。こんなおいしい相手からのパスを小野が逃すはずは無い。ジーコが監督となってから100本目のゴールは、こういうしまらない形ながらも小野によってもたらされた。

こういう風に先制すると、相手はムキになって取り返しに来るものなのだが、日本とインドのように力が違いすぎると、インドもそう簡単に攻め上がれない。したがって、相手のゴール前には依然としてインドの選手たちが群がっていて、これがこの後追加点も取れないまま、後半13分まで続いてしまう。

それにしてもインドはなぜ、サイドのスペースをがら空きにしてしまったのだろうか?加地は何度も鋭い突破を見せていた。追加点も加地の突破と小笠原のボールキープから、長谷部の狙い済ましたシュート、ゴール前に詰めていた巻の胸に当たってゴールとなった。

そして、CKから福西がバックヘッドで3点目のゴールを決めると、インドは完全に崩壊した。また、巻に代わって久保とコンビを組んだ佐藤寿人は、久保とのコンビネーションは抜群で、佐藤が入ってからの久保の動きはまるで蘇ったかのようだった。やはり長年広島でコンビを組んだだけの事はある。残りの時間での3点は完全にこの2人だけのものだった。

長谷部が良い。初めての代表と思えないほど、落ち着き払って、余裕でボールを捌いている。あと、佐藤も久保とのコンビネーションで存在感を見せた。巻も必死だった。懸命にボールを追いまわす姿は、感動モノだった。他は、殆ど守備機会が無かったので評価できない。

問題点は、やはり先制点と追加点の入る時間が遅いことだ。数え切れないほどチャンスを逃し続けた。もっと強い相手だったら、流れを変えられていたかもしれない。