「舞姫」

金メダルの効果でしょうか、荒川静香さんへの関心が急速に高まっているようです。友人のokami09さんのブログにも取り上げられていました。

ともかく、あのイナバウアーは、得点には関係ないのに、あの人は、高得点だからとかじゃなく、メダルのためじゃなく、印象に残る演技、記憶に残る演技をしたいってことにこだわって、おそらくはその一環として、イナバウアーをやっているわけよ。そういう精神が好きだな〜と思ったわけよ。

ってな具合に。
それというのも、オリンピック前まで、メディアは安藤美姫さんをメダルが取れても当然のように持ち上げていたから、比較的マークが緩かった荒川さんは、ペースを乱されずに済んだともいえます。

それにしても、安藤さんの持ち上げ方は尋常ではなかったですよね。7・8回に1回しか飛べない4回転ジャンプを「完璧に飛んだ」と表現する神経は、理解に苦しみます。出番が近づく連れ、安藤さんが見込み薄の4回転を跳ぶほうへ追い込まれていくのが手に取るように分かりました。言葉は悪いかもしれませんが、今回の安藤さんの役割は、サッカーで言う「マークを背負ったつぶれ役」とでも言えるのではないでしょうか?

前評判が良くても実力が伴わなくて、後々酷評が続くのと、下馬評にも上らなかった実力者が、力通りの好成績で後々も評価されるのでは、誰が考えたって後者を選びたがるでしょ?いったい、誰があんな状況を作り出したのでしょうか?

さて、人気急上昇の荒川さん。鼻高々なのは、むしろ本人よりも、以前から注目していたファンたち。「静香マニア」とでもいうのでしょうか?ファンのサイトでは、マメに彼女に関する情報を蓄えていた様子が窺えます。意見の食い違いから袂を分かったといわれるのタチアナ・コーチ談話を日本語訳して公開しているところもあります。

イナバウアー」は今年の流行語大賞の候補になりそうです。こういうのは他の流行語でもそうですが、必ず以前の意味よりは、別の解釈が加えられて流行って行くものです。例えば、今回の「イナバウアー」ならば、「1点にもならない技を、自分らしさを表現するためにあえて加えてきた」点がクローズアップされています。この「自分らしさを表現する」行為全般に「イナバウアー」が頻用されるんじゃないかと、私は思うんですよね。年末発刊の「現代用語の基礎知識」辺りには、OLや就職活動中の女子大生に良く使われる言葉として掲載されるんじゃないかと思います。

面白かったのは、彼女の本籍地を「東京」とする説と「神奈川県鎌倉市」とする説が交錯した点です。正解は、後者の鎌倉だったのですね。「東京説」が流れたのは、荒川さんが質問の意図を上手く聞き取れずに、「生まれた場所ならば東京の関東逓信病院です」と答えた事が原因のようです。高校に入学するまでは鎌倉だったのでしょうかねぇ?

それにしても運命的だなと思ったのは、鎌倉に住んでいた荒川さん。「静香」という名は、「静御前」から頂いたそうです。愛する人の仇・頼朝の前で「吉野山 峰の白雪 ふみわけて 入りにし人の 跡ぞ恋しき」「しづやしづ しづのをだまき くり返し 昔を今に なすよしもがな」と義経を慕う歌を唄って舞った天才的踊子の名を彼女は受け継いでいたわけで、生まれながらにして「舞姫」となる運命を背負っていたのですね。