サッカーを謀略に利用するな

おきらく軍事研究会(在神戸)というところが配信しているメルマガが号外を配信してきた。在米の読者が送ってきたメールをそのまま引用したものらしい。ただ、そのタイトルが「サッカーを利用した謀略」とあっては、サッカーファンとしてはす見逃すわけにはいかない。
いったい何が謀略なのか?と見てみれば、Yahoo!スポーツに掲載されたニュースを引用すると、

http://sports.yahoo.co.jp/hl?c=sports&d=20060308&a=20060308-00000032-nks-spo

この記事なんだそうな。

U-23五輪代表の強化の一環で、「日本、中国、韓国3カ国の五輪代表(U−21=21歳以下) による交流戦を計画していることを明らかにした。」という日刊スポーツでも読んだ記事だった。川渕キャプテンは、「08年は五輪があって無理だが1年で(日本は)4試合できればと計画している。相当な強化にもなる」と乗り気なようなのである。

さて、これのどこが謀略なのかということなのだが、リンクの記事の最後のほうを読むと分かるのだが、

「日本五輪代表のキャンプには有識者を招いて、日中、日韓の歴史を選手に勉強させるための講義も実施することにしている。同キャプテンは「交流の場を設けることで、相互理解を深めることにもなる」としている部分である。あ、こりゃ、危ないわ。

キャプテンとしては、政治的に冷え込んでいる日中・日韓関係をスポーツの面から橋渡しを出来ないかという理念に燃えているようなのだが、どうも、そういうキャプテンの理念重視の姿勢を政治的に利用しようと企んでいるようである。

私は、「靖国参拝問題」はたしかに内政への干渉と思っているが、あまり挑発的に強行するのもいかがなものかと思っている立場の人間であるが、若者に歴史を勉強させるのに、他国の人間の考え方を持ち込むのは、いささか危なっかしいと感じる。

だってこれ、日中・日韓の共通の歴史認識を持つとか云々の話でしょ?なんか利用されそうですよね。いくら、スポーツの場に政治を持ち込まないといっても、歴史認識を勉強する会なんか開いたら、もろに政治の世界に引きずり込まれてしまう。

だいたい、そもそも多国間で「共通の歴史認識」なんて可能なのだろうか?日中・日韓以外の国の例で考えてみてもわかるだろうけど、不可能だよね。アメリカとヴェトナムで共通の歴史認識セルビアクロアチアボスニアで共通の歴史認識?欧州とトルコで共通認識?いや、アメリカとメキシコですら不可能でしょ?

歴史というのは丸い林檎のようなもので、日本から見て美味そうな林檎が、中国や韓国からは虫食いの不味そうな林檎に見えてもしょうがないものだと思う。大事なのは、両方の立場の違いがある、つまり共通の歴史認識なんて存在し得ないという認識を持つことなのではないだろうか?

川渕キャプテンは、この点に気がついているのだろうか?サッカーのことだけしか考えてはいないと思うけど、仮に歴史の講義の時に「日本の立場」なんぞを主張しようものなら、友好どころの騒ぎではなくなるだろうし、主張できなかった場合には、恐ろしく不利な歴史認識を植えつけられて帰ってくることになるのではないか?そういう認識を持って、堂々とサッカーで戦えると思ってるのかなあ?

くだんのメルマガの読者さん、川渕キャプテンに抗議のメールを送ったそうな。私は送らなかった。今頃、あちこちからいろんな事を言ってきているはずだと思う。私も、やるんならサッカーだけにしてくれと思っているのだが。