WBC運営上の問題点

WBC優勝に冷や水を浴びせるようで恐縮だが、3/20の日刊スポーツがサッカーW杯との比較でWBCの運営上の問題点を指摘していた。私の考え方と少し違う点もあったが、面白そうなので取り上げてみた。できればリンクで引用したかったのだが、ネット上には存在しない記事だったので、書き写す形となった。それは、以下のようなものである。
1.審判問題
2.組み合わせ
3.大会日程
4.開催時期
5.順位決定法
6.選手健康管理
7.代表チーム編成
8.収益分配
9.開催国の国歌

と、9点に渡っていた。

詳細を見ると、1は誤審を続ける審判を起用し続けているという問題についてなのだが、概して、野球の場合、審判の誤審に大らかである。一つの判定をめぐって、いつまでも言い続けるのはいかがなものかと思う。それよりも、審判問題で肝心なのは、対戦している当事国の審判が臆面もなく、起用されている点である。この問題は、日本を始めとするほかの出場国からも第三国からの選出を要求されていながら、アメリカ側が譲らなかった問題だ。理由は、「アメリカの審判は優秀だから、問題ない」との事だったらしいが、一方でメジャー・リーグはオープン戦真っ盛りで、審判の需給が逼迫しており、結果、技量で劣るマイナー・リーグの審判が起用されることになってしまっており、アメリカ側の主張と矛盾している。奇しくも、悪役となったデヴィッドソン氏は、マイナー・リーグに降格していた審判員であった。

2の組合わせの問題は、みんな感じていたと思う。何で三回も韓国と戦わねばならなかったのか?普通、1次リーグ1位と2位ならば、2次リーグでは別のリーグの2位と1位とに組み合わされるはずだ。この場合、普通とはサッカーとの比較を意識してはいるのだが、敢えてサッカーと比較するまでもなく、できるだけバラエティーに富んだ対戦となったほうが、見る方も楽しみが増えると思う。また、一部で言われている、アメリカが強豪のカリブ海諸国との対戦を避けたかった云々の揶揄も打ち消すことが出来たはずだ。この辺は、サッカーW杯のドローのやり方から学んで欲しい。

3の大会日程は、リーグ戦最終戦の開始時間の問題の事を言っている。同じリーグ内のほかのチームの戦況と見て、場合によっては手を抜く可能性がある事を避ける意味で重要といわれているが、野球に関して言えば、これはなかなか難しい芸当だと思う。むろん、同時開催はした方が良いけれども、他の問題の方が大きいと思う。

4の開催時期はシーズン前がどうのこうのと言っているが、シーズン後でも、シーズン中に中断しても、どうやっても不満の出る問題だ。この指摘はあまり意味がない。それよりも、興行的に考えれば、オリンピックを相手にするよりは確実だったにしても、パラリンピックを完全に隅に追いやってしまった罪は大きいと思う。今後も、かち合う可能性を考えれば、やはりシーズン後が適切なのかもしれない

5のグループリーグの順位決定法が失点率の低い方を有利としたのは、確かにおかしい。これは、アメリカのメディアも取り上げていた問題だったが、なるほど9回で勝ちきるよりも、延長戦で勝った方が有利になるのは、変なルールだ引き分けを採用する勝ち点制か、得失点差による順位決定が適当と思う。

6.7は、ともにWBCが各国リーグや協会を統括できないことに原因がある。選手の健康管理というのは、要するに投手の球数制限のこと。各国代表チームの編成がそれぞれのチームの行為によって可能になっているので、特に消耗品といわれる投手の肩や肘は温存せねばならないから、あまり投げさせないようにということである。同様に、呼びたい選手を呼べないのも、選手が代表チームよりも所属チームのほうを見ているから起こる問題なのだ。まあこれは、WBCの実行主体と各チームとの力関係が簡単に逆転するとは思えない。挙国一致体制で臨んでくる国が、チームや選手のエゴを尊重している国を完膚なきまでに叩きのめし続けなければ、逆転する見込みはない。ただ、それが逆転することを我々が望むべきことなのだろうか?疑問に思う。スポーツに必要以上に挙国一致的な民族主義を持ち込むと、ちょっと面倒なことになると思う。

8の収益金の分配がアメリカに35%、日本に7%、韓国に5%と偏っていることは、初めて知った事実である。確かに不公平な感じもするが、じゃあ、サッカーの場合は、いったいどんな比率で分配しているのか?データが無いので批判のしようもない。アメリカが開催国という理由で多く取ると言うのだが、じゃあ日本と韓国の2%の差って何なんだろう?

9の開催国の国歌というのは、おそらく観客の殆どがアメリカ人だから、たとえば韓国と日本が対戦する試合でもアメリカ国歌が吹奏されるという訳なのだろう。これは、全くの杞憂ではないだろうか。観客は多少民族主義的ではあったとしても、概ね純粋に野球のゲームを楽しんでいたと思う。もっと楽しむためには、必要以上に試合前のセレモニーの時間を増やすべきではない。しかし、こんなところにも「USA,USA」と9・11以降のアメリカン・ナショナリズム(この場合は民族主義ではなく、国家主義か?)の嫌らしさが滲み出ている。

まあ、全体的にみて、野球関係者はこういう国際大会の開催に慣れてはいなかったということだね。次回(3年後?)は、果たしてあるのだろうか?もしあるならば、今回の問題点を解決しておいて欲しいものだ。特に、1.2.4.5の解決は必須だと思う。また、8の場合は、分配比率の根拠を明確にしてもらいたい