最近の私

  • K子さんを偲ぶ会

先月24日は、今年1月に亡くなった、大学時代の友人「K子さんを偲ぶ会」に参加するため、東京は渋谷の創作イタリアン料理店に集まった。

意外だったのは、大学時代にK子さんと付き合っていたYさん。彼女の訃報を知らされていなくて、数ヵ月後に送付されたサークルのOB会報に掲載された記事で、初めて知ったそうだ。「修羅場になることを恐れて、連絡を差し控えたのか?」とも思ったが、まさか20台の若造じゃあるまいし、そりゃないだろう。思うに、「Yさんなら、もう知ってるだろう」という先入観がみんなの間に流れてしまって、不幸にも知らされなかったのだろう。

私が1月の末にK子さん宅を焼香に訪れていたことも、同期の女子連中の知るところとなっていた。「まあ、俺なんかが行ったって、なんでアンタが?ってなもんだったろうけどね。」と自嘲したら、幹事のR子が、「そんなこと無いわよ。だって、あの子のメール・アドレス、最後までアンタのニック・ネームだったわよ」と言われ、そのときは一瞬ショックを覚えた。

「いや、俺、あいつがYさんと付き合ってたのを知ってるし、あいつも俺が誰に気があったか知ってるはずだし……」

まあ、R子が期待する以上に動揺したりもしたのだが、よくよく考えてみれば、驚いたりショックを受けたりすることではなかった。「あ、俺、それ、知ってたわ。年賀状に書いてきたことがあったもん」と気がついたからだ。しかし、その私のあだ名ってのは、K子さんが名づけたものだが、何だってそんなに気に入ってたのかは、おそらく永久に謎になってしまったなあ……

その会場で、人が集まりだして、さあこれから始めようと言う時になって、店内のTVがNHKニュースを流していて、字幕で「次期代表監督に、オシム氏と交渉中」と出た。このときは未だ、あんな形で発表になったとは知らなかったので、「これは、良いニュースだ」と思っていたのだ。

どういう経緯で、みんなの知るところになったのかを知ったのは、深酒を後悔して目覚めたホテルのTVで見たTBSの「サンデー・モーニング」の「川渕キャプテンのオフサイド」という見出しだった。その時になって、キャプテンがうっかりと口を滑らせたことを知ったのだ。

拙い事になったと、そのときは思った。ユーゴの内戦を経験して、新聞報道による謀略戦に負けてユーゴが孤立していくのを目の当たりにしていったオシムは、非常に慎重な人である。今期のJリーグ開幕直前の監督会議で、1部2部全ての監督が揃った中で、あるTV局のレポーターが発した質問「この中で、日本代表の監督をしてみたいと思う人は?」には、高齢を理由にノーと答えていた。今の彼の代表監督への意欲を見れば、この時の彼の言動は、彼の慎重な性格から出ていた警戒心だったのだろうと思う。

そんな彼と契約して、日本代表を強化しようと言うサッカー協会の会長が、不用意にもオシムが契約中のクラブにも無断で「交渉中」と口を滑らせてしまったのを、彼はどう感じたのだろうか?

「サンデー・モーニング」の解説者・張本は、サッカーに関しては門外漢の癖に、頓珍漢なサッカー解説をするが、この時だけは、当たらずとも、意外に鋭い洞察を言った。「わざと言ったのなら、この会長は凄い人だね。代表の報道で良いのが無いから、わざとリークすることは有り得る」

まあ、日本代表の1次リーグ敗退以来、日本のサッカーに関する報道は冷え切っているから、次期監督のリーク程度でどの程度の効果が得られるかは疑問だが、「わざと世論を沸騰させて、千葉にその事実を突きつけたのでは?」とオシムが不信感を抱いても、おかしくは無かったところだ。

今となっては杞憂だったが、「いったい何が彼を日本代表監督へ向かわせたのだろうか?」気になるところだ。聞くところによると、日本代表敗退直後に、サポーターが4人ほど、車を乗り継いでオーストリアグラーツまでオシムを訪ね、「日本代表をお願いします」と頼み込み、それに大きく心を動かされたと言う。

4人に、心から感謝したい。

長くなったので、今宵はここまで。