うちの若いもんが

うちの若いもん(大学のサークルの後輩たち)が、ジプシー・ルンバのバンドをやってます。名前は、ジプシー・グルーブ。

自主製作のミニアルバムやインディーズ・レーベルでのアルバムも出すという、本格的なものです。ただ、実際にCDを聞いてみると、CDを制作した段階での彼らの歌は、まだこなれていないなと感じたこともありました。

そのかわり、彼らのステージや路上ライブなどのパフォーマンスを見ると、彼らが歌いこんだものであればあるほど、彼らなりの良さが感じられる出来になっています。本来、スタジオなどで缶詰めになって作り上げるものよりも、ああやって聴衆と一体となって盛り上げていく方が、あいつ等らしさなんだなと感じることがよくあります。

ジプシー・ルンバとは、どういうものか知ってますか?フラメンコにはルンバという形式の曲があります。元々は、タンゴスという形式のリズムから派生したもので、それが中米キューバにわたってからアフリカ系音楽の洗礼を受け、リズムの裏打ちなどが入り、よりカッコよくなって欧州大陸に逆輸入されました。それが、フラメンコでは、ルンバ・フラメンカでした。

スペインのフラメンコ・アルティスタにとっては、それはあくまでおまけ的なものであって、ステージのアンコールの際に演じられる程度のものでした。このブログの看板と名前にもなっているパコ・デ・ルシアは、トカール・フラメンコ(ギター・フラメンコ)を完全に独立・確立させた人ですが、彼のルンバなどでのインプロビゼーション(即興演奏)は、彼が若いころにアメリカ大陸にわたって演奏活動していたときに、さまざまなジャンルの音楽やミュージシャンと出会いながら身につけたものが融合されてでき上ってきたものです。

一方、スペイン以外でルンバに出会ったジプシーたちは、自らをそういう縛りにからめとらせるようなことはしませんでした。「客に受けるんなら、じゃんじゃんやりましょう」ってんで、やり始めて、そればっかりの演奏をし始めます。

マニタス・デ・プラタなんてスペインっぽい名前の人ですが、主な活動場所は南フランスのアルルでした。そのせいか、フラメンコっぽい曲もやるんですが、「あれれ、ちょちょちょっと、待って、おっさん、そのリズム一拍多い」とかいうことがあって、南フランスの人ってことがまだわからなかった頃の私には、「かなり眉唾な演奏の人」という印象でした。まあ、フラメンコのリズムを体になじませるのは、なかなか難しいですから、マニタスの場合は、あれはまたああいう音楽なんだと思う人も多いですし、それでいいのでしょう。

その彼の親類縁者から生まれ出たのが、80年代に世界的な人気になったジプシー・キングスでした。日本でも人気がありました。一番聴かれているのが、ビールのCM曲にもなった「ボラーレ」でしょうか?実はこれ、スペインの曲でも、フランスの曲でもありません。Domenico Modugnoと言う人が自作して歌っていたカンツォーネです。つまり、イタリアの曲。聞いてみると、ジャズっぽく、後乗りにして、ゆったりと歌っています。ジプシー・キングスは、この曲を完全の前乗りのアップ・テンポの曲にして、受けています。たぶん、時代がそういう曲を求めたのでしょう。その他に、ジプシー・キングスでは、歌の入らない曲(インストルメンタル)で、「インスピラシオン」という曲が一部のマニアに知られています。これは、日本の時代劇ドラマ「鬼平犯科帳」のエンディング・ロールのBGMにも使われていた曲で、この曲を聴くとパコ・デ・ルシアのルンバのインプロビゼーションの影響が感じられ、ジプシーたちの演奏も時代の要求に従って洗練されてきてるのだなと感じる一方で、ジプシーらしい粗っぽさが少し薄れてしまったなという感じもします。


うちの若いもんたち(ジプシー・グルーブ)が本来やっていたのが、このジプシー・キングスのコピー・バンドでした。なるほど、彼らの活動の歴史を読むと、大体その頃かという感じがします。

HPのメンバー紹介を読むと、なかなか面白い経歴の持ち主がいます。中でも、”Luis”こと 榊忠昭君は、世界中を放浪したことのあるやつで、かなり危険な目にも合っているようです。他のメンバーたちもそれぞれに、音楽を身につけるうえで、スペイン語なり、英語なりも身につけて来ている連中も見受けられます。そんな中で、セミプロゆえの特徴というか、本業の都合で数年間韓国に転勤していて、戻ってきたメンバーもいたりで、このバンドもかなり他言語活動になってきたなと先輩(私)は思っとるわけです。

私の東京での活動拠点は、大学時代は池袋でしたが、先年、この大学のサークルの連中で集まったのは渋谷でした。現在、私が参加している多言語交流活動の本部も渋谷にあるので、私のブログを読んでくれる人たちは、何らかの形で渋谷に縁のある人が多いように思います。ジプシー・グルーブの連中も渋谷に拠点のひとつがありますので、縁がありましたら見に行ってやってください。

彼らの音楽試聴と、そのほかの映像はここをクリックしてご覧ください。