ピンク色の覆面

まず最初に、ヒッポ・レアレアFの諸君に、19日夜に私が話したことに認識違いがあったことをお知らせしておかなくてはならない。

それは、2月4日朝6時ごろ、S市で発生した強盗事件のことで、私が警察から取り調べを受けたと言ってしまったことだ。正確には、取り調べではなくて、事情聴取、聞き込みの類に属する質問に答えたということなのである。

この日の朝発生した強盗事件のせいで、学校に出張販売に出かける我々としては、いつも解放されている学校の玄関のドアが、職員玄関を除いて、生徒玄関はすべて閉ざされていたりで、かなりの不都合が生じていた。ただ、まさか、わが街で強盗事件などというものが起こっていたとは知らなかったので、いろんな理由を、ああでもないこうでもないと考えていたのだ。

事件が起こったのは、わが街の郊外を走っている国道わきにできたインターネット・カフェ。犯人はピンク色の覆面をかぶって押し入り、レジからわずかな現金をつかみ取りして、逃走したというものである。

警察官が事情聴取に来るというので、母は動転した。あちこちに電話を掛けまくるが、朝から携帯電話を部屋に置き忘れていた私に連絡が届かない。配達が終わって帰ってきた4時すぎごろ、私は、ようやくその事実を知った。

店に来るという。

ちょうど、海堂尊の「ナイチンゲールの沈黙」を読んだ直後だったので、店でアクティブ・フェイズで質問されたら嫌だなぁ……などと考えていたら、入ってきた人は、不定愁訴外来のグッチー先生みたいな人だった。

これには、私もほっとしたのだが、同時に向こうもほっとしている様子。なんとなれば、犯人の特徴は、やせ形の体型というのである。トゥントゥンヘェな体型の私を見て、一目で被疑者の対象から外した様子だった。大きなお世話だ。

当日・同時刻の私の行動、家族構成、学歴、被害店舗の利用頻度、一通りのことが聞かれた後、同店舗の姉妹店が新潟市内にあるというのだが、行ったことはあるかと聞くのである。行ったことはないけれども、その店の前なら毎週通ると答えた。当然、何をしに?という質問になる。

そこで、レアレアFで話した、What's Hippo?の話になってしまうのだが、私が「取り調べ」と言ってしまったために、レアレアのみんなは、「警察官にそんな話をしたの?」という風に驚きの目で見られてしまったようだ。

実際に、私を疑っているようでもないし、質疑応答はほんとに気楽な日常会話の様に進んだのだから、こうなってしまったのだ。警察官氏も、すぐに興味を失い、それに気がついて、私も止めてしまった。

そのあと質問は、「ピンクの覆面」の話になった。これには、まったく接点がない。ハロウィンでレゲェマンのかっこをしたり、クリスマスにサンタに化けたりはするが、プロレスラーのような覆面はいたずらに幼い子供たちを怖がらせるだけなので、避けるようなカッコだ。

ただ、これで少し興味がわいたので、ネットで検索してみた。覆面というからには、おそらくプロレスラーのミル・マスカラス風のものだと思っていたら、それがピンク色ということになると、意外に入手しにくい。それでも、あちこちのブログで見かけるから、どこかで売られてはいると思う。

また、何かを代用品として使ったものも、覆面と呼ぶこともある。代表的なのがストッキングだ。Mr.Childrenの「フェイク」という曲のPVには、ピンク色の薄い布をかぶった男女が踊っている。薄いから目を出さなくても視界は遮られない。しかも、覆面という名の商品にこだわらない分だけ、安く手に入るというわけだ。安いものなら、一度使って捨てても、また手に入れやすい。

ただ、そう考えてきて思うのだが、「ピンクの覆面」というのは、ミスチルの曲じゃないがフェイク=目くらましじゃないかという気がする。いかにも特徴がありそうな物品に目を向けておいて、犯行時以外の時は、被っていないので追いかけにくいというわけだ。

また、覆面自体が顔という身体の中で最も特徴を見出しやすい部分を覆い隠す役割をするものだが、「ピンクの覆面」ほど派手なものなら、他にもいろんな特徴的なものから、目をそらさせる効果があるような気がする。たとえば、目に特徴があるとか、指の本数とか、そういったもの。

まあ、警察なら当然、別方面の調査もしていると思うけど、朝6時という時間帯を犯行に選んだことの方が、「ピンクの覆面」などという目くらましよりも、ヒントなんじゃないかなという気がする。レジにそれなりに多く金が入っていて、しかもチェックイン・チェックアウトで曲がレジに並びにくい時間を知っているやつら、以前そこで働いていた連中、24時間営業という職場の経験者の可能性もあるし、そういう場所を襲った犯行歴のある連中も要チェックだと思う。