ヒッポ・ネームの功罪

多言語交流サークル・ヒッポ・ファミリー・クラブでは、入会と同時に自らヒッポ・ネームというニック・ネームを名乗り、通常お互いはこの名前で呼び合う。これは、年齢や立場を飛び越えて、大人も子供もお互いに心を開きあうためにするのだが、日本以外の国から来た人には、日本名が発音しにくい人もいたりして、そういう人には大いに呼びやすいという予想外のメリットもある。

であるからには、当然デメリットもある。

先日、某自治体の施設を借りるために、公民館まで申し込みに行った。いろいろ面倒なことを言う自治体なのだが、なんとか無事に借りることができた。この手続きには、私のほかに、会を主宰するヒッポのメンバーG君がいたので、この後のことも含めて、申込書の写しをだれに渡すだの何のと段取りを彼と確認していたのだが、ふと気がつくと、係の課長さんが我々の話を聞いている。

まあ、お互いのことをあだ名で呼び合うなどというのはヒッポならずともよくある話なのだが、ヒッポ・ネームの場合は一般の人の前では、ちょっと気恥ずかしくなる呼び名もあるのだ。某有名映画の登場人物とか、子供の場合はアニメやゲームのキャラクター名の場合もある。また女性メンバーの場合、可愛いからとつけた名前でも、聞く人によっては源氏名みたいに聞こえる場合もある。

私はG君に「ここじゃあ、ヒッポ・ネームで呼ぶのやめようか?」と持ちかけたが、お互いに本名で呼び合うことを考えた場合、「?口さん、○田さん、岩×さん、★木さん」などと呼び合うことになり、「それって、誰のこと?」と、かえって混乱してしまう。

そういえば、以前、県外からのメンバーをゲストに迎えて、新潟駅近くの居酒屋で飲もうということになった。あらかじめR君が店に予約を入れていたのだが、会場に早く着いてしまった私は、店のスタッフに「どちらさまのご予約でございますか?」と聞かれて、ハタと困ってしまった。

R君というのは、無論、ヒッポ・ネームである。しかも、R君のRというのは、ファンタジー映画のキャラクター名だから、これを一般の人たちの前で呼ぶにはあまりにも恥ずかしい。それに、予約は本名で行われている訳だから、R君の本名をスタッフに告げねばならない。ところが、普段、ヒッポ・ネームだけで呼び合っているために、肝心の本名が出てこない。喉まで出かかっているのだが………出てこない。

結局、見当違いな名前を5つくらい挙げてみて、ようやくBINGO!でも、スタッフは不信感をぬぐえないようなのである。おまけにこの日は、私は別行動だった一方で、ゲストをエスコートする他のメンバーの来店がかなり遅れた。

待っている間、私はかなり肩身の狭い思いをしたので、自分の世界に入ることにした。すなわち、ヒッポのCDで暗唱できるようになった箇所のおさらい(ヒッポでは"メタ活"という)をしたのである。ただ、通常ファミリーでやっているような大きな声ではできないので、小声でブツブツとつぶやいたのである。

店のスタッフの不信感は、さらに増してしまったようである。(涙)